Grotto








コンクリートの甲羅で空間を守る

兵庫県芦屋市内に建つ店舗・オフィス・SOHOなどの複合用途を持つテナントビルである。国道沿いの商業地域という移ろいの激しい都市環境にあって、近くの六甲山の御影石による岩山のような、風化しながらも永く残り続ける建築をつくろうと試みた。

コンクリートの一枚岩のような外観と、敷地形状や斜線制限などの法規制から導かれたいびつな形態は、そんな想いの表れでもある。

外部の喧騒から内部空間を守り、地震などの自然災害に抵抗するのは、建物の表皮を覆う甲羅状の外殻壁である。外殻壁には大小に穿たれた開口が散りばめられており、この建物の表情を特徴付けている。実は、この外殻壁は、厚さの等しい柱・梁・壁で構成したれっきとしたラーメンフレームである。充分な厚さと緻密な配筋を与えることで、多数の開口を確保しながらも、耐震構面としての応力負担を可能にしている。

内部には基本的に躯体はなく、がらんどうの空間である。層状に重なった床版を支持する4本の鉄骨ポストだけを配し、室内にあらわれる構造体を最少に止めた。梁(逆梁)と床版とは下面を揃え、フラットな打ち放し天井とすることで、空間の質感に統一感を与えている。こうして確保したオープンスペースは、自由なプラニングを可能とし、将来にわたり空間のフレキシビリティーを発揮し続けることであろう。

風化しながらも泰然と残り続ける自然の岩山のように、力強さと重厚感を備えた永らえる空間づくりを志した建物である。

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構造ダイアグラム

■ 設計
 建築:芦澤竜一建築設計事務所
 空調・衛生:柴田設備設計
 電気:芝野設備設計事務所
■ 施工
 日本建設
■ 構造概要
 所在地:兵庫県芦屋市
 主用途:事務所
 構造:鉄筋コンクリート造 一部鉄骨造
 階数:地上5階 地下1階
 建築面積:322.06m²
 延床面積:1431.30m²
 竣工年月:2009年11月

※掲載誌
 新建築2010年4月号

  • 2010-01-19